【評価しない評価制度】「強化」と「弱化」とは?
――人は「評価」で行動するのではなく、「行動の結果」で行動を繰り返す――
「評価しない評価制度」を理解するうえで、とても大切な考え方があります。
それが、
「強化」と「弱化」
という行動の原則です。
少し難しそうな言葉ですが、実は私たちは毎日、この原則の中で生活しています。
例えば、
-
「ありがとう」と言われると、また手伝いたくなる。
-
努力したことを認めてもらえると、次も頑張ろうと思う。
-
反対に、一生懸命やったのに何も反応がなければ、次第にやらなくなる。
これは偶然ではありません。
人は、
「行動した後に何が起きたか」
によって、次の行動を決めているのです。
この考え方を人材育成に取り入れたものが、「評価しない評価制度」です。
人は「評価」ではなく「結果」で学習する
従来の評価制度では、半年後や一年後に、
-
評価点
-
ランク
-
昇給
という結果が伝えられます。
もちろん、それも一つの方法です。
しかし考えてみてください。
今日、お客様に素晴らしい対応をしたとして、
その評価が半年後に伝えられても、
その時の行動を正確に思い出すことは難しいでしょう。
一方、
応用行動分析学では、
「行動の直後に何が起きたか」
を大切にします。
なぜなら、
人はその直後の結果によって、
次も同じ行動をするかどうかを決めるからです。
「強化」とは何か
まずは、強化の原理です。
強化とは、
何かの行動をした結果、良いことが起きたり、困っていたことがなくなったりすると、その行動は繰り返されやすくなることです。
例えば、
ある社員がお客様へ丁寧な対応をしました。
すると、
お客様から、
「ありがとう。」
と言われました。
さらに、
上司から、
「今日の対応は、お客様がとても安心されていましたね。」
と具体的なフィードバックを受けました。
すると、
その社員は、
「次も同じように対応しよう。」
と思います。
これが、強化です。
強化は「ほめること」とは少し違う
ここで誤解しやすいのが、
強化とは、
単にほめることではありません。
例えば、
「頑張ったね。」
と言われても、
何が良かったのか分からなければ、
次の行動にはつながりにくくなります。
一方、
「お客様の話を最後まで聞いていたから、安心して相談してくださいましたね。」
と伝えれば、
本人は、
どの行動を続ければ良いのか
が分かります。
つまり、
強化とは、
望ましい行動を具体的に伝え、その行動が繰り返されるようにすること
なのです。
「弱化」とは何か
次に、弱化の原理です。
弱化とは、
何かの行動をした結果、嫌なことが起きたり、良いことがなくなったりすると、その行動は減っていくことです。
例えば、
社員が改善提案を出したとします。
ところが、
「そんなこと考えなくていい。」
「余計な仕事を増やさないで。」
と言われたらどうでしょう。
おそらく、
次から提案しようとは思わなくなります。
これが、弱化です。
実は「何も反応がない」ことも弱化になる
職場で最も多いのは、
強く叱ることではありません。
むしろ、
何も反応がないことです。
例えば、
-
お客様対応を工夫した。
-
チームを助けた。
-
自分から改善した。
それなのに、誰も気づかない。
何も言われない。
すると、「やっても意味がない。」と思うようになります。
この状態が続くと、
望ましい行動は少しずつ減っていきます。
つまり、
反応がないことも、
弱化につながることがあるのです。
「評価しない評価制度」は強化を増やす制度
評価しない評価制度
評価しない評価制度では、
半年後に評価するよりも、
日々の仕事の中で、
パフォーマンス・フィードバックを行います。
例えば、
-
今日のお客様対応
-
今日の改善提案
-
今日のチームへの支援
を振り返ります。
そして、
「良い・悪い」
を判断するのではなく、
「この行動がお客様の安心につながりましたね。」
「この工夫がチーム全体を助けましたね。」と、
行動の意味を具体的に伝えます。
これによって、
望ましい行動が自然と増えていきます。
経営計画とのつながり
経営計画
強化する行動は、
会社が目指す方向と一致している必要があります。
例えば、
経営計画で、「地域で最も信頼される会社になる」と掲げているなら、
強化する行動も、
-
約束を守る
-
相手の話を最後まで聞く
-
困りごとを先回りして解決する
といった行動になります。
つまり、
経営計画は、
「何を強化するのか」を決める基準でもあるのです。
ワークルールブックとのつながり
ワークルールブック
ワークルールブックには、
会社が大切にしたい考え方や行動が書かれています。
例えば、
-
約束を守る
-
仲間を支える
-
お客様を優先する
などです。
しかし、
書いてあるだけでは、
行動は変わりません。
そこで、
パフォーマンス・フィードバックを通じて、
実際にできた行動を具体的に伝えます。
すると、
ワークルールブックは、
「読むもの」ではなく、
「毎日実践するもの」へ変わっていきます。
「強化」を増やす会社は成長する
評価しない評価制度が目指しているのは、
社員を評価することではありません。
目指しているのは、
会社が大切にしたい行動を、
少しずつ増やしていくことです。
そのためには、
望ましい行動を見つけ、
すぐに伝え、
その価値を本人と共有することが欠かせません。
それが積み重なることで、
個人の成長だけでなく、
組織の文化も育っていきます。
まとめ
応用行動分析学では、
人は行動した後の結果によって、
その行動を続けるかどうかが決まると考えます。
「評価しない評価制度」は、
この考え方を人材育成に取り入れています。
その流れは、とてもシンプルです。
経営計画で会社が目指す方向を示す
↓
ワークルールブックで望ましい行動を明確にする
↓
パフォーマンス・フィードバックで行動を振り返る
↓
望ましい行動を具体的に伝えて強化する
↓
望ましい行動が習慣となり、組織の文化になる
これが、
「評価しない評価制度」が目指す人材育成の仕組みです。
一言で言うと
「強化」とは、望ましい行動が自然と増えるようにすること。
「弱化」とは、望ましい行動が減ってしまう環境をつくってしまうこと。
評価しない評価制度は、人を評価する制度ではなく、強化を通じて望ましい行動を増やし、人と組織を成長させる制度なのです。
