「パフォーマンス・フィードバック」の効果とは?
――人は評価されると変わるのではなく、「自分の行動が見える」と変わる――
「評価しない評価制度」の中核となるのが、
パフォーマンス・フィードバックです。
しかし、
「フィードバックをするだけで、本当に人は変わるのでしょうか?」
という疑問を持つ方も少なくありません。
実は、その答えを示す、とても興味深い事例があります。
「スピード違反94%」という看板
ある道路で、スピード違反がなかなか減らないという問題がありました。
そこには以前から、
「制限速度50km」
という標識が設置されていました。
つまり、
「ルール」はすでに伝えられていたのです。
ところが、速度はなかなか下がりませんでした。
そこで新たに設置したのが、
「昨日、この道路を通ったドライバーの94%がスピード違反でした。」
という看板です。
ここで注目していただきたいのは、
この看板には、
-
「もっと気を付けましょう」
-
「違反すると危険です」
-
「速度を落としてください」
といった指示や叱責は一切書かれていなかったことです。
書かれていたのは、
「昨日は94%でした」という事実だけでした。
すると、不思議なことに、
道路全体の平均速度が少しずつ下がっていった
のです。
なぜ事実だけで人は変わるのか
この事例が教えてくれることは、とてもシンプルです。
人は、
責められたり評価されたりしたから行動を変えるのではありません。
自分の行動が見えるようになると、自ら行動を修正し始めるのです。
つまり、
人は「評価」よりも「気づき」によって変わる
ということです。
これが「パフォーマンス・フィードバック」の考え方
評価しない評価制度では、
上司が、
「良い」「悪い」
を判断することが目的ではありません。
目的は、
本人が自分の行動を客観的に振り返ること
です。
例えば、
「今月はお客様への報告が5件ありました。」
「先月より相談を受ける回数が増えています。」
「チームへの声掛けが自然にできています。」
このように、
まず事実を共有します。
そこから、
「なぜ、その行動ができたのでしょうか。」
「次も続けるためには何が必要でしょうか。」
と対話を進めていきます。
評価ではなく「見える化」が人を育てる
従来の評価制度では、
半年後や一年後に、
評価結果を伝えることが一般的でした。
しかし、
何か月も前の出来事を振り返っても、
本人は具体的な場面を思い出しにくくなります。
一方、
パフォーマンス・フィードバックでは、
日々の仕事の中で、
行動を小まめに振り返ります。
すると、
-
何ができているか
-
何が変わってきたか
-
次に何を伸ばせばよいか
が見えてきます。
だからこそ、
成長のスピードも速くなるのです。
経営計画とのつながり
経営計画
パフォーマンス・フィードバックは、
会社が目指す方向を実現するための仕組みでもあります。
例えば、
経営計画で、
「お客様から最も信頼される会社になる」
という方針を掲げたとします。
すると、
フィードバックでは、
-
約束を守れたか
-
お客様の話を最後まで聞けたか
-
信頼につながる対応ができたか
という事実を振り返ります。
つまり、
経営計画を「読むもの」ではなく、
毎日の行動につなげるものに変えていくのです。
ワークルールブックとのつながり
ワークルールブック
ワークルールブックには、
会社が大切にしたい考え方や行動が書かれています。
例えば、
-
約束を守る
-
相手の立場で考える
-
仲間を支える
といった内容です。
パフォーマンス・フィードバックでは、
それらが実際の仕事でどう表れていたかを振り返ります。
例えば、
「今回の対応は、お客様を優先するという私たちの考え方がよく表れていましたね。」
というように、
会社の価値観と日々の行動を結び付けていきます。
その積み重ねが、
会社の風土をつくっていくのです。
パフォーマンス・フィードバックがもたらす5つの効果
① 自分の行動に気づける
評価されるのではなく、
自分自身で振り返ることで、
改善点や強みが見えてきます。
② 成長が見える
昨日より今日、
先月より今月、
できることが増えていることを実感できます。
③ 行動が続きやすくなる
できていることを確認することで、
「次もやってみよう」
という前向きな気持ちが生まれます。
④ チームの方向がそろう
経営計画やワークルールブックを基準に振り返るため、
組織全体が同じ方向を向いて仕事ができるようになります。
⑤ 評価への不満が減る
点数ではなく、
行動事実をもとに対話をするため、
「なぜその話になったのか」が分かりやすくなります。
納得感が高まり、
上司と部下の信頼関係も築きやすくなります。
まとめ
評価しない評価制度では、
人を変えるために評価を行うのではありません。
パフォーマンス・フィードバックを通じて、行動を「見える化」し、自ら気づき、自ら成長することを支援します。
その流れは、とてもシンプルです。
経営計画で会社の目指す方向を示す
↓
ワークルールブックで行動の基準を共有する
↓
パフォーマンス・フィードバックで日々の行動事実を振り返る
↓
本人が気づき、自ら行動を改善する
この積み重ねが、
社員一人ひとりの成長につながり、
やがて組織全体のパフォーマンス向上へとつながっていくのです。
一言で言うと
人は評価されると変わるのではありません。
自分の行動が見えるようになったとき、自ら変わり始めます。
パフォーマンス・フィードバックとは、その「気づき」を生み出すための仕組みなのです。
