「人事評価をしているのだから、給与や賞与に反映させるべきではないですか?」
人事制度の相談を受けると、よくいただく質問です。
結論から申し上げると、 A4一枚評価制度において、評価結果を給与や賞与に直接反映させないという考え方は十分にあります。
むしろ会社によっては、その方が評価制度本来の目的を達成しやすい場合もあります。
ただし、「評価と処遇を完全に切り離す」のではなく、「評価の役割」と「賃金の役割」を明確に分けることが大切です。
なぜ多くの評価制度はうまくいかないのか
多くの会社では、いつの間にか評価制度の目的が、
・給与を決めるため
・賞与を決めるため
・昇給を決めるため
になっています。
すると社員は、「どう成長するか」ではなく、「どうすれば評価を下げられないか」を考えるようになります。
その結果、
・チャレンジしなくなる
・無難な行動を選ぶ
・本音を言わなくなる
ということが起きます。
評価制度が人材育成の仕組みではなく、査定の仕組みになってしまうのです。
A4一枚評価制度の本来の目的
A4一枚評価制度では、評価制度の目的を業績向上と人材育成に置いています。
つまり、評価とは、「できた・できないを判定するもの」ではなく、
「行動を振り返り、成長につなげるもの」なのです。
経営計画との関係
経営計画には、
・会社が目指す方向
・今期の重点課題
・実現したい未来
が示されています。
しかし、経営計画を作っただけでは成果は出ません。
成果を生み出すのは、 社員一人ひとりの日々の行動です。
だから評価制度は、「経営計画に沿った行動を増やすための仕組み」として活用します。
もし評価が給与査定だけになると、社員の関心は、「会社を良くすること」ではなく、「評価を落とさないこと」に向いてしまいます。
ワークルールブックとの関係
ワークルールブックは、この会社で成果を出すための行動基準です。
例えば、
・お客様の立場で考える
・改善を続ける
・仲間を尊重する
といった内容です。
評価制度では、こうした行動が実践できているかを確認します。
ところが給与との結びつきが強すぎると、本来の行動改善ではなく、「評価を取るための行動」になってしまうことがあります。
評価と給与を分けるメリット
① 面談が本音になる
給与査定が中心になると、面談はどうしても緊張します。
しかし評価の目的が成長支援であれば、
・困っていること
・失敗したこと
・今後の課題
を素直に話しやすくなります。
② チャレンジしやすくなる
給与が評価に直結すると、どうしても失敗を避ける行動が増えます。
一方で、成長を目的とした評価であれば、新しいことへの挑戦がしやすくなります。
③ 人材育成に集中できる
A4一枚評価制度は、もともと人材育成のための制度という考え方が強くあります。
だから面談も、
・過去の反省
・次の行動
・成長支援
に時間を使えるようになります。
では給与や賞与はどう決めるのか
ここでよく誤解があります。
評価を給与に反映しないからといって、適当に決めるわけではありません。
A4一枚評価制度では、賃金は「役割」に対して支払うという考え方があります。
例えば、
・一般社員
・主任
・課長
・部長
では、求められる役割が違います。
そのため賃金は、「どの役割を担っているか」を基準に決めることができます。
賞与との付き合い方
賞与については、会社ごとに考え方が異なります。
例えば、
① 評価と連動させない→ 利益配分として支給する
② 業績中心に決める→ 会社業績や部署業績を反映する
③ 一部だけ反映する→ 評価結果を参考資料として活用する
などの方法があります。
実務的には、評価を100%賞与に反映するよりも、評価を参考資料の一つとして活用する方が、A4一枚評価制度の思想に合っています。
最後に
A4一枚評価制度では、評価の目的は給与を決めることではありません。
評価の目的は、経営計画を実現するために、社員の行動を変え、人材育成につなげることです。
だから、評価結果を給与や賞与に直接反映させないという選択は十分にあり得ます。
むしろ、
・業績向上
・人材育成
・自律型組織づくり
を目指すのであれば、 「評価は育成のため」 「賃金は役割のため」と役割を分けて考える方が、本来の目的を見失いにくくなります。
経営計画、ワークルールブック、A4一枚評価制度。
この3つが一本につながったとき、評価制度は「査定の仕組み」から「成長の仕組み」へと変わっていくのです。
