「評価しない評価制度」という発想は、単なる逆張りでも理想論でもありません。
むしろ、従来の人事評価制度が限界を迎えた現場から生まれた必然の進化です。
1. 「評価制度の形骸化」から始まった
多くの企業が抱えていた悩みは共通していました。
- 評価シートを埋めるのが目的化している
- フィードバックが形だけになっている
- 評価結果に納得感がない
- 評価をしても成長につながらない
つまり、評価はあるのに、成果も成長も生まれないという矛盾です。
人事の現場ではこんな声が上がっていました
- 「公平に評価しているはずなのに、社員が動かない」
- 「評価会議が“点のすり合わせ”になってしまう」
この状況を一言で言えば、評価制度が目的化したということです。
2. 「公平性の追求」が本来の目的を歪めた
本来、評価制度は「人材育成」と「組織の成長」のために作られました。
しかし、多くの企業が「公平に処遇を決める」ことに力を注ぎすぎた結果、
「評価すること」が目的になり、「成長させること」が置き去りになったのです。
- 公平性を目的にすると、制度は複雑になる。
- 育成を目的にすると、制度はシンプルになる。
この反省から、「評価を簡略化しよう」「対話を重視しよう」という動きが生まれ、 そこから一歩進んだ形として「評価しない評価制度」が登場しました。
3. 「VUCA時代」と「自律型人材」の登場
さらに環境変化が追い打ちをかけました。
- 目標が半年で陳腐化する
- 組織よりも個人のキャリア志向が強くなる
- 現場での意思決定スピードが求められる
こうした時代では、上司が一方的に評価する構造そのものが遅い。
だからこそ、社員が自ら目標を立て、振り返り、成長を可視化する仕組みが必要になった。
その答えが、「評価ではなく対話」「点数ではなく共感」を軸にした制度です。
4. 「経営と人づくりの一致」を取り戻すために
「評価しない評価制度」は、単に優しさやゆるさの象徴ではありません。
むしろ、経営の意図を人づくりに再接続するための制度です。
経営が「どんな組織を目指すのか」を明確にし、
その方向に社員の成長を導く──その媒介が“評価”から“対話”へと変わったのです。
- 評価をなくすことは、経営の意思を曖昧にすることではない。
- むしろ、経営の意志を人づくりの現場に取り戻すことなのです。
